不動産の使用貸借とは?土地の借地権・相続税などを説明します
不動産の土地などを使用貸借によって使う場合があります。
では使用貸借とはいったい何でしょうか?
気をつける点などを説明します。
使用貸借とは?
使用貸借という言葉は日常生活の中ではあまり聞き慣れない言葉です。
住宅を建てたり借りたりする時にこれに該当する事があります。
例えば他人から物を借りる時には賃貸借と使用貸借があります。
レンタルDVDやレンタカー、お部屋などをお金を払って借りる場合は賃貸借です。
一方、友達から本やDVD、傘などをタダで借りる場合は使用貸借になります。
つまり有償か無償かによって賃貸借と使用貸借に分かれます。
どちらも貸し借りなので、使い終わったら返却することが前提です。
もし返さないのであればそれは譲渡もしくは贈与という話になってしまいます。
使用貸借は不動産の場合で考えると、
❏権利金や土地代を払わないで親の土地を借りて自分の家を建てる
❏親が所有しているマンションにタダで住む
などが挙げられます。
※(補足)権利金とは?
権利金とは、借地契約の際に借地権を設定する時に、賃借人が貸主に支払うお金のことです。賃料とは別に支払い、敷金とは違うので契約が終了しても返還されません
また親子間でなくても、夫婦・兄弟姉妹・親族などで使用貸借がされることも珍しくありません。
使用貸借と権利金や賃料の関係は?
土地の使用貸借の場合は高額なだけに色々と問題が生じます。
第三者から土地を借りる場合、通常は相応の権利金を支払い、さらに契約に基づく賃料を支払うことになります。
これが一般的な借地権です。
それに対して使用貸借の場合、使用貸借を始めるにあたり権利金を支払うことは考えられません。
権利金などが支払われればそれは使用貸借にはなりません。
権利金を支払うのは無理でも賃料だけでも支払っている場合は賃貸借とみなされ、権利金を支払っていない分の「利益を得た」として贈与税の課税対象になってしまう場合もあります。
土地の賃料がその土地の固定資産税・都市計画税の金額以内であれば、そのまま使用貸借として取り扱われますが、その金額を超える賃料だと問題です。
つまり、使用貸借の場合は権利金も賃料も支払わずに、無償または税額相当の範囲内の負担で使用することが原則なのです。
ただし、土地を使用するために必要な経費などは借主が負担するのが一般的です。
使用貸借の場合、契約書はどうするのか?
親などから無償で土地を借りるときに、書面による使用貸借契約書を交わす事が要件ではないので口頭の約束でも有効です。
しかし親子や親族であれ、後々のトラブルを避けるために使用貸借契約書を作成するほうが望ましいです。
使用貸借契約書では、契約期間や使用目的、費用負担、禁止事項(譲渡の禁止など)を明確にしておきます。
また使用貸借は契約期間の満了や合意解除、契約違反による解除のほか、借主の死亡によって終了します。
使用貸借の権利には法的な保護はありません
一般的な借地権の場合には借地借家法によって権利が保護されるのに対し、使用貸借の場合はその適用がありません。
土地の借主が自分の費用で家を建てれば、当然ながら建物部分については権利を主張できるものの、敷地の権利には法的な保護がありません。
権利が弱いために、土地の使用権に関する財産上の評価額は「ゼロ」として取り扱われます。
したがって、対象の土地と自分の建物を一緒に「中古一戸建て住宅」として第三者に売却したときでも、その土地代金はすべて地主(親など)の取り分であり、土地の借主が受け取りを主張することはできません。
もっとも使用貸借の大半は親子・親族などの為、何らかの配慮はあるのではないでしょうか。
相続の際には使用貸借は要注意です
使用貸借では、相続の際における土地の評価などにも注意しなければなりません。
使用貸借の対象となっている土地は、借地権における貸宅地としての減額や、借主がアパートなどを建てていたとしても貸家建付地の減額などは適用されず、更地とみなして評価されます。
借地権評価と混同してしまうと想定外の相続税がかかることもあります。
さらに、兄弟姉妹のうち誰かが親の土地やマンションの1室、実家とは別の家などを使用貸借しているときに「自分には権利があるはずだ」という思い違いから、トラブルに発展することもあるようです。
また親から土地を借りた本人は、使用貸借と認識していたのにもかかわらず、その妻が誤解していたために夫婦間の争いになったケースもあるとか・・・
これから使用貸借を始めようとするときには、その権利関係をよく確認しておくと共に、兄弟姉妹がいるときにはしっかりとその理解を得ておきましょう。
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