賃貸住宅のサブリースに社会的な問題があると認識された要因は
平成30年3月に金融庁と消費者庁および国土交通省が連名で「アパート等サブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルに注意して下さい!」と題する資料を公表しました。
賃貸住宅のサブリースに社会的な問題が生じていると認識されています。
なぜそのように認識されているのかについて紹介します。
賃貸住宅のサブリースとは
賃貸住宅のサブリースとは「賃貸住宅の管理をするサブリース業者が、貸主(所有者)から物件を賃借りし、転借人(入居者)に転貸する形式で、事実上の賃貸住宅の管理を行うこと」です。
サブリースにはさまざまな形態がありますが、代表的なのが次の3つになります。
1,貸主がもともと所有している賃貸住宅を対象としてサブリースをするもの
2,貸主がサブリース業者から購入した賃貸住宅を対象としてサブリースをするもの
3,貸主が所有する土地上にサブリース業者が貸主から賃貸住宅の建築を請け負って建築した賃貸住宅を対象としてサブリースをするもの
よくあるパターンは3になります。
大手の住宅メーカーが賃貸住宅を建築して、関連の不動産会社が管理・サブリースをするような形態です。
なぜ不動産オーナーはサブリースをするのか?
不動産オーナー(貸主)がサブリースをする理由は、不動産オーナーが借主(入居者)と賃貸借契約を結んで契約の管理をする手間を省くことができる点と、なによりも多くのサブリース業者がウリ文句にしている「長期間の家賃保証」で、不動産オーナーが「空室のリスク」や「滞納リスク」を回避することができると期待するからです。
社会的に問題があったサブリースの相談事例
金融庁と消費者庁および国土交通省が連名で出した「アパート等サブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルに注意して下さい!」と題する資料から、消費者庁の消費者ホットラインに寄せられたサブリースの関する相談事例を紹介します。
相談1「勧誘に関する相談」
・母親に対してアパートの建て替えと一括借上げをするのでアパートを経営しないかと断ってもしつこく勧誘される
・不動産会社が高齢の父に相続税対策としてアパートを建てるようにしつこく勧誘しくる。断りたい。
相談2「費用負担などの契約内容に関する相談」
・10年前、建設会社に勧誘されてアパートを建てたことに始まり、一括借上げ、特約システム等次々に契約や費用負担を強いられる。
・電話勧誘で首都圏にシェアハウス1棟の建築契約とサブリース契約を結んだが、契約時の約束と異なることがあり不安になっている。
相談3「家賃の減額に関する相談」
・投資目的でシェアハウスを購入して、事業者とサブリース契約をした。1年を過ぎた頃から5年間の家賃保証が守られずに困っている。
・自宅の一部を賃貸するサブリース契約を結んだが、十分な説明がないまま家賃保証額を下げられて困っている。サブリース契約をやめたい。
・15年前に両親が建てた賃貸アパートの賃料をサブリース会社が下げると言ってきた。ローン返済も困難になっている。
・14年前に賃貸アパートのサブリース契約をした。2年ごとに契約を更新するが、条件が悪くなる一方だ。
サブリース業者などによる不正行為について
金融庁はサブリース業者による不正行為として、2つの事例を公表しています。
1,不動産業者(や金融機関)が、賃貸住宅の賃料や入居率について、実勢よりも高く想定、もしくは実績値よりも高い数値に改ざんして、当該賃貸住宅の評価を行い、割り増しされた不動産価格に基づき、金融機関から必要以上に多額の融資が実行された。
2,金融機関の融資審査を通すために、不動産業者が以下のような不正行為を行っていた例。
①自己資金のないオーナーの預金通帳を改ざん
②自己資金のないオーナーについて、オーナーの口座に金融機関の融資審査に必要となる資金を見せ金として振り込む。
③自己資金のないオーナーについて、売買契約に必要となる諸費用を捻出するために、実際の売買価格よりも水増しした価格による売買契約を別に作成して金融機関に提出する。
国土交通省によるサブリース契約の注意喚起について
国土交通省もサブリースを検討している人に対して、サブリースは3つのリスクがあるとしています。
1,賃料は変更になる場合があること
2,契約期間中でも解約されることがある
3,契約後の出費もあること
賃貸住宅のローン返済も含めた事業計画やリスクについて不動産オーナーが十分理解する必要があります。
契約の相手方から説明を受ける時は、契約内容や契約期間中の賃料減額などリスクを十分理解してから契約して下さい。

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