【認知症と資産凍結】親が元気なうちに家族で話すべき「お金と不動産」の防衛策
日々の業務で様々なお客様とお話ししていると、「親の介護」だけでなく「親の財産管理」に関する切実なお悩みを耳にする機会が本当に増えました。
親が高齢になったとき、多くのご家族はまず施設や介護サービスの手配を心配されます。しかし、実務の現場から見ると、もう一つ絶対に知っておいていただきたい重大なリスクが潜んでいます。
それが、認知症による「資産凍結(不動産や預金が動かせなくなること)」の問題です。
認知症は介護問題であると同時に「経済問題」である
認知症は、決して個人の健康問題だけにとどまりません。
日本の認知症高齢者が保有する金融資産や不動産は、2040年には約350兆円規模にまで膨らむと予測されています。これは国家の予算すら超えるような膨大な金額です。
つまり、日本全国で「持ち主が生きているのに、誰にも動かせないお金や不動産」が大量発生する時代に突入しているのです。
なぜ「親のお金」なのに家族が引き出せないのか?
「親のお金なんだから、子供が代わりに手続きすればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、現実はそう甘くありません。
認知症が進行し、法的に「意思決定能力がない」と判断されると、以下のような手続きが一切できなくなります。
・銀行口座からの預金引き出し、定期の解約
・実家や所有アパートの売却
・不動産の賃貸借契約の締結・更新
・大規模修繕のための銀行融資
救済措置として「成年後見制度」がありますが、この制度の本来の目的は「本人の財産を減らさないこと」です。そのため、生活費や医療費の支払いはできても、家族の判断で不動産を売買したり、資産運用に回したりといった柔軟な対応は極めて難しくなります。
不動産オーナーにとって「塩漬け期間」は致命傷になる
さらに厄介なのが、認知症は「体は健康でも、判断力だけが低下した状態」が長期化しやすいという点です。資産が動かせない「塩漬け」の状態が、5年、10年と続くケースも珍しくありません。
とくに福岡市や春日市、大野城市などで賃貸経営をされている不動産オーナー様にとって、これは致命的なリスクです。
「屋根の修繕のためにローンを組みたい」「空室対策でリフォームしたい」と思っても、名義人である親の判断能力がなければ、手も足も出なくなってしまうのです。
一番の恐怖は「相続対策」が強制終了すること
意思決定能力が失われると、将来に向けた対策もすべてストップします。
・遺言書の作成
・暦年贈与などの生前贈与
・生命保険を活用した節税
現在の相続税は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」が基礎控除額です。都心部や住宅地に不動産をお持ちのご家庭なら、あっという間にこのラインを超えてしまいます。
有効な節税対策や、争族を防ぐための準備が「認知症になった瞬間に強制終了」してしまうこと。これが最も恐ろしいポイントです。
手遅れになる前に!今すぐ着手すべき3つのステップ
では、資産凍結という最悪の事態を防ぐために、ご家族は何をしておくべきでしょうか。実務上、以下の3つを強くお勧めします。
1. 資産の「棚卸し」をする
まずは、親が「どこに」「どのような財産を」持っているのかを正確に把握してください。
預貯金の口座はもちろん、不動産の固定資産税評価額や、有価証券の有無などです。全体像が見えなければ、対策の立てようがありません。
2. 相続税のリスクをシミュレーションする
把握した資産をもとに、大まかで構わないので「現状で相続税がいくらかかりそうか」を試算します。
特に不動産をお持ちの場合は、ご家族が思っている以上の評価額になり、課税対象となるケースが非常に多いです。
3. 「家族信託」という選択肢を持つ
最も有効な防衛策がこの「家族信託」です。 親が元気なうちに、「財産の管理・処分をする権限」を信頼できる家族(子どもなど)に託す法的な仕組みです。
これを結んでおけば、親が認知症になった後でも、家族の権限で不動産の売却や修繕、現金の管理がスムーズに行えます。
ただし、家族信託は「親に意思決定能力があるうち」にしか契約できません。
まとめ:一番の対策は「今日、家族で話すこと」
認知症の進行そのものを完全に防ぐことは難しいかもしれません。
しかし、「資産が凍結して家族が途方に暮れる未来」は、今のうちから準備をしておけば確実に回避できます。
「うちの親はまだ元気だから大丈夫」と思っている今が、まさに動き出すベストなタイミングです。
ぜひこの記事をきっかけに、今度のご家族の集まりで「これからの財産管理と安心の備え」について話し合ってみてはいかがでしょうか。
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