共有名義の不動産を売却する5つの方法 相続・離婚ケース別に解説
「相続した実家を兄弟で共有しているのですが、面倒が多いので手放したいです。共有名義の家を売るときは共有者の同意が必要ですか?売らないと言われたら、どうすればいいですか?」
これは共有名義の不動産を持つ方からよく寄せられる相談です。
結論からいうと、不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要です。ただ、全員の合意が取れない場合でも、方法はあります。この記事では、状況に応じた5つの売却方法をわかりやすく解説します。
●まず確認:2024年4月から相続登記が義務化されています
2024年4月1日より、不動産の相続登記が法律上の義務になりました。相続で不動産を取得した方は、それを知った日から3年以内に登記の申請が必要です。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料(ペナルティ) が科される可能性があります。
また、この義務は2024年以前の過去の相続にも遡って適用されるため、古い相続のまま放置している不動産がある場合は、2027年3月31日までに手続きを済ませる必要があります。
売却を進める前に、まず登記状況を確認しておきましょう。
共有名義・共有持分とは
共有名義とは、1つの不動産を複数人で所有している状態のことです。そして「誰が、どれくらいの割合で持っているか」を示すのが共有持分(もちぶん)です。
たとえば、兄弟3人で親の家を相続した場合、法定相続分(法律で定められた相続の割合)では各自が「3分の1」の持分を持つことになります。
共有名義になりやすいのは、相続で複数の人が不動産を引き継いだケースと、夫婦がお金を出し合って住宅を購入したケース(ペアローン=夫婦それぞれが住宅ローンを組む方法を含む)が代表的です。
共有名義では、建物の大規模な増改築や、不動産全体を担保(抵当権など)に入れる場合は、共有者全員の同意が必要です。
なお、2023年4月の民法改正により、短期間の賃貸(土地は5年以下・建物は3年以下)については、全員の同意がなくても持分割合の過半数の賛成で決められるようになっています。ただし、売却は引き続き全員の同意が必要です。
方法① 共有者全員で売却する(最もおすすめ)
最も確実で、売却額も一番高くなる方法です。全員が同意すれば、通常の不動産売却と同じ流れで進められます。
売却代金は、諸費用を差し引いたあとに持分割合に応じて分配します。住宅ローンが残っている場合は、売却代金から先に返済します。
高齢の共有者や遠方に住む共有者がいる場合も、「委任状(いにんじょう=手続きを他の人に代わりに行ってもらうための書面)」を使えば、本人が現地に来なくても手続きを進めることができます。
まずは他の共有者に「売りたい」という意思を伝え、共有を続けるデメリットや売却後のメリットを丁寧に説明することから始めましょう。
方法② 他の共有者の持分を買い取り、単独名義にして売る
「売りたくない」と言っている共有者がいる場合、その人の持分をあなたが買い取るという方法があります。全員分を買い取れば不動産はあなた一人の名義になり、自由に売却できます。
「相場より少し高く買ってほしい」と言われるケースもありますが、最終的に自由に売れることを考えれば、多少の上乗せで合意が得られるなら検討する価値はあります。共有者が多い場合は全員との交渉・契約・支払いが必要になるため、時間と根気が必要です。
方法③ 自分の持分を他の共有者に買い取ってもらう
「自分は早く手を引きたい」という場合、あなたの持分を他の共有者に売るという選択肢があります。
買い取る側にとっては持分が増えて単独所有に近づくため、相手にとってもメリットがある提案です。持分割合がすでに多い共有者ほど「あと少しで全部自分のものになる」と感じやすく、交渉に応じてもらいやすい傾向があります。
まずは相手の持分の買い取りを持ちかけ、断られたら「では逆に私の持分を買ってもらえませんか」と提案してみるのも一つの流れです。
方法④ 自分の持分を専門業者に売却する
話し合いがまとまらず、早急に現金化したい場合に使える方法です。共有持分のみを専門に買い取る不動産業者があり、他の共有者の同意なしに自分の持分だけを売却できます。
ただし、売却価格は不動産全体の市場価格より大幅に低くなるのが一般的です。また、持分を買い取った業者が他の共有者に対して強引な買い取り交渉をしてくるケースもあるため、売却前に他の共有者へ一報を入れておくことが望ましいでしょう。
「共有者と連絡が取れない」「関係が悪化していて話し合いができない」といった状況では現実的な選択肢ですが、金額面での損失は避けられない点を理解したうえで判断してください。
方法⑤ 共有物分割請求訴訟(話し合いが決裂した場合の最終手段)
どの方法を試しても合意が得られない場合、裁判所に「共有物分割請求訴訟(きょうゆうぶつぶんかつせいきゅうそしょう)」を申し立てるという手段があります。これは裁判所が強制的に共有関係を解消する手続きで、費用・時間ともにかかりますが、最後の切り札です。
裁判所が命じる分割方法は主に3種類あります。
1.現物分割は、不動産を物理的に分けてそれぞれが単独で所有する方法です。主に土地で使われますが、建物がある場合は難しいことが多いです。
2.賠償分割(全面的価格賠償)は、一人が不動産全体を取得し、他の共有者には持分相当の金額を支払う方法です。2023年の民法改正でこの方法が法律に明記され、使いやすくなりました。
3.換価分割は、不動産を競売(けいばい)にかけて売却し、代金を持分割合で分配する方法です。
共有者が行方不明の場合も対応できるようになりました
相続を繰り返した不動産では、共有者の中に連絡が取れない人がいることがあります。2023年の民法改正により、裁判所の手続きを経ることで、不明者を除いた共有者だけで売却などを進められる制度が新設されました。
ただし、相続によって生じた共有関係でこの制度を使うには、相続開始から10年が経過していることが条件になるケースがあります。
相続した土地を手放したいなら「相続土地国庫帰属制度」も選択肢に
「売れない土地を持っていても固定資産税だけかかって困る」という場合、国に土地を引き渡す「相続土地国庫帰属制度(そうぞくとちこっこきぞくせいど)」という選択肢もあります。
条件を満たせば不要な土地を国に返還でき、以後の固定資産税や管理の手間がなくなります。ただし、建物が建っている土地や担保権が設定されている土地は対象外です。
共有地の場合は共有者全員での申請が必要で、審査手数料14,000円と10年分の土地管理費相当の負担金もかかります。詳細は法務局に相談してみてください。
まとめ
共有名義の不動産を売る方法はいくつかありますが、優先度の高い順に整理すると次のようになります。
まず目指すのは、共有者全員で合意して売却することです。売却価格が最も高くなり、後のトラブルも起きにくい最善の方法です。
全員での合意が難しい場合は、他の共有者の持分を買い取って単独名義にする、または自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうという方法を検討しましょう。
それでも話がまとまらないときは、専門業者への持分売却か、共有物分割請求訴訟という手段があります。ただし、専門業者への売却は価格が大幅に下がり、訴訟は費用と時間がかかることを念頭に置いてください。
権利関係が複雑な場合や、共有者との交渉が難しい場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
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