親の土地に自分で家を建てる時はご注意下さい
親の土地に家を建てる時、土地代が不要で二世帯住宅も容易になります。
しかし、将来のこともしっかり考えてから建てないと思わぬ落とし穴が待っているかもしれません。
この時、建設費用は息子である自分が全額負担をして
「敷地は親の名義、建物は自分の名義」
といったケースはよくみかけます。
予期せぬトラブルに発展する場合もありますので十分な注意が必要です。
土地を借りても実は
まず、親の土地をタダで借りたときの「使用貸借」には権利が認められません。
敷地を第三者から借りて家を建てるとき、通常であればそこには「借地権」が存在します。
この借地権の評価は、国税庁が定める借地権割合により住宅地では6~7割程度のことが多いです。
都心部や商業地など、相対的に地価が高いところでは9割に達することもあります。
借地権割合が7割ということは、もし仮に(計算しやすいように高めの価格を例示しますが)所有権での更地評価が1憶円の土地があったとき、そのうち7千万円が借地人の財産分、3千万円が地主の財産分となります。
ところが、親の土地をタダで借りたときは「使用貸借」といって、通常の意味での「借地権」が成立しません。
そのため借地借家法による権利の保護はなく、さらに財産上の評価もゼロであることが国税庁長官の通達によって明確に指示されています。
つまり、使用貸借のときは土地の権利が認められていないのです。
ちなみに地代を払っていても、それが固定資産税等に相当する金額以下のとき(相応の権利金の支払いがない場合)は、同様に「使用貸借である」ものとされています。
数年後に不満が爆発する可能性が非常に高い
家を建築した直後であれば、土地の権利がないと言われても
「親の土地だから当然のこと」
として冷静に受け止めることができます。
家の権利はすべて自分のものですから、気持ちにも余裕があることでしょう。
ところが数十年後に親が亡くなり、いざ相続が発生したときに問題が起こります。
その土地以外に主だった財産がなければ
「自分の家の敷地が兄弟姉妹の共有」
となるわけです。
他の兄弟姉妹からみれば
「兄の家の敷地の持分」
を貰っても何ら利用価値はありませんから、代わりに金銭による対価を得たいという話になります。
その処理をめぐってずっと言い争いが続くことにもなりかねません。
また相続ではなくても、その家を売ろうとしたときに不満が爆発することになります。
仮に家を建ててから30年後に売ろうとすれば、家の売買価格評価はゼロに近い数字です。
土地の権利はもともとありませんから、家を売っても取り分はほとんどゼロで、売却代金の大半は親のものとなります。
理屈では分かっても、なかなか納得できないのが人の性分。
さらに使用貸借でありながら数十年経つうちに、いつの間にか
「自分には土地の権利が7割あるはずだ」
などと思い込んでしまっている人も少なからずいらっしゃるのでご注意下さい。
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