こんな場合は、躊躇しないで相続放棄をしましょう
相続が開始した場合、実際に相続放棄をする場面はどんなケースが考えられるでしょうか?
これを賃貸マンション・アパートを所有している不動産オーナーに当てはめると、実は極めて多くなるのではと予測します。
相続対策として賃貸経営を始めた不動産オーナーの多くが相続放棄の選択を余儀なくされる・・・そんな時代になるかもしれません。
相続した賃貸マンションで悩んでいるオーナーの場合
ある税理士さんに相談があった話です。
親から相続したマンションがあるけど、満室にならないうえに借金の返済が多く、自己資金を持ち出してしまっているそうです。
ちなみにこのマンションは築15年。相続対策のためだと建設会社に勧められて建てたが、もともと賃貸経営に興味はなかったそうです。
そのため、建物の外装などの汚れが目立ってきて、リフォームをする時期はとっくにきています。
賃貸する部屋も15年前の仕様のままで、古さが目立ってきているがリフォームするお金は当然ながら無い。
相談された税理士さんは、満室時の利回りが当時の投資額に対してどれぐらいになるのかを計算してみると8%程度でした。
現在の空室率は5割で利回りは半分の4%。当時の金利が3%として、元金の返済と管理費の支払いがあるから、当然家賃ではまかなえず自腹で持ち出し、大幅なマイナスになってしまう。
仮に満室になっても収支はトントン。しかし築15年を超えていれば、元金の返済が減価償却費の額を上回り、黒字倒産の状態に陥る恐れがあります。
自分の残っているお金を申告所得が上回ってしまう
例えば、実際には年間のキャッシュフロー(手許の現金のほか、普通預金など)が100万円なのに、申告所得は200万円ということが起きるのです。
当然毎年の所得税は200万円にかかってくるので大変です。
結局満室になったとしてもより多くの税金がかかるので、キャッシュはほとんど残りません。
これでは何のためにマンションを相続したのかわからなくなってしまいます。これを解消するためには、借金を繰り上げ返済できればいいですがその現金もない。
遺産相続の際に自分はマンションをもらうので、現金は他の親族に分割して相続させているケースが多いからです。
相続放棄をしていれば苦労しなかったかもしれません
残念ながら今回のケースは選択肢があまりありません。
たとえマンションが満室になったとしても、繰り上げ返済をしてローンの残高を減らさないとキャッシュフローは手元に残りません。
親から引き継いだ不動産を守りたいと思うなら、早めに満室になるために努力して借金を返済し続けるしかありません。
もしそれが難しいのであれば、相続時に相続放棄をするか、相続後であれば売却するしかありません。もし売却しても残債が残るのであれば、債務減免を銀行と交渉するしかありません。
相続対策として賃貸経営をするのなら、その賃貸物件を健全な形で引き継がせるのも親の努めではないでしょうか。
それができないのであれば、そもそも賃貸マンション・アパート経営での相続対策は考えない方がいいです。
不動産は全部売却して使い切ってしまったほうが、残された親族はよっぽど幸せかもしれません。

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