資産家や地主を狙う相続対策での不動産バブル
数年前、空前の相続対策バブルと言われていました。
資産家や地主様が、相続対策としてマンション・アパートを新築する現象が起こりました。最近は金融機関の引き締めなどもあり、建築ブームは多少なりとも落ち着いた感じがします。
そんな中、数年前にある地主様から相談を受けたケースをご紹介します。
相続コンサルタントからマンション建設を提案される
その地主様の土地は、中心部から電車で1時間以上も離れた郊外にあります。相続の勉強にためにと書店で相続対策関連の本をいくつか購入しました。
その本の著者の相続コンサルタントのセミナーにも積極的に参加したそうです。セミナー終了後によくある個別相談へと話が進み、いくつかある土地の中から約400坪の土地の具体的な相続プランを提案してもらうことになりました。
しかし、後日このコンサルタントから提案されたプランは目を疑うものでした。
ワンルーム60戸の新築賃貸マンション、総額4億円。表面利回りは7%。建築資金は35年ローンで、全額銀行から調達するという計画でした。
その相続コンサルタントが言うには、4億円の借金をして賃貸マンションを建てれば、相続税を払う必要がなくなります。
あまりに業者の都合の良い企画内容
ところが、この立地は中心部から離れていて、ワンルームの需要がほどんどありません。にもかかわらず、ワンルーム60戸もの計画はあまりにも規模が大きすぎます。
地主様が相手にこう切り返すと、コンサルタントは1棟まるごと借り上げるので30年間空室の心配は要りませんと力説。地主さんはかなり違和感を覚えて、当社に相談に来られました。
企画書を見て「あまりにも業者に都合の良い企画書で、絶対にやってはいけない相続対策」だと話しました。
容積率めいっぱいに建物を計画し、将来の需要予測は完全に無視。規模の最大化を狙う建設業者の独りよがりな計画。
それを建設業者のサブリース(一括借り上げの家賃保証)だから安心だと安易に提案する相続コンサルタント。
無茶苦茶な節税対策の先にあるのは・・・
もし、このまま計画を進めていったらどうなるでしょうか?この地主様は相続税の節税と引き換えに、35年という長い間借金にあえぐことになります。
サブリース(一括借上げ家賃保証)業者はおそらく数年で逃げ出します。実はサブリース業者は、採算が悪くなったらいつでも撤退できるような契約になっています。
また30年一括借上げ家賃保証といっても、2年ごとに保証家賃は見直すことができるようになっています。
不動産オーナー様と折り合いがつかなければいつで撤退することができる。法的にもサブリース業者が有利です。知らないのは不動産オーナー様だけなのです。
このパターンで賃貸経営を始めれば、いずれ借金は返せなくなり、地主さんは土地を手放すことになると思います。
無理な節税をした挙げ句に土地を取られる。ミイラ取りがミイラになるとはまさにこの事です。
すべてがこの様な悪意のコンサルタントではないと思いますが、十分注意することが必要です。

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